小説風カクテル記事録
バーテンダー 角 輝男
第一話 青い月に照らされて 前編

第一話 青い月に照らされて 前編

・プロローグ

知り合いとの約束をドタキャンされ、新宿歌舞伎町のど真ん中で一人きりのヒロシ。

傘が欲しいと五感が感じだす緩いシャワーの様な雨が降り出す。
信頼してる天気予報のアプリ、出掛ける前に確認した時は20%だったのにと思わず舌打ちをしてしまう、、

落胆のため息と同時に「さて、どうしますか、、、」と考えた刹那、目の前にある看板が目に入る。

「お一人様、、、限定、、、バー!?」

ヒロシの身体は無意識に扉の方へ吸い込まれていった。まるで引力に導かれるかの様に、、

・角 輝男との出会い

ヒロシ:BARの扉って何か重々しくて緊張しちゃうなぁ、、、けどせっかく八王子から来たんだ、勇気を出さないと、、それに、この扉の向こうには楽しい世界が待っている様な気がする、、、

ヒロシはもうどうにでもなれという気持ちで重々しい扉のドアノブに手を伸ばす。

「カランカラン」と扉の動きに合わせて鈴の音が鳴り響く。

もう後戻りはできないな、、、と覚悟したのと同時に「こんばんは、こちらの席へどうぞ」と暖かい声が聞こえた。

ヒロシ:こんばんは。あのこちらのお店って一人でしか来店できないのですか?

バーテンダー:左様でございます。当店はお一人様限定のBARです。前例も特にありませんが、お二人でのご来店はお断りしております。
皆様お一人で来店されるので自然に会話も発生し、お気軽に楽しめるお店になっております。
ちなみに本日、お客様が一番目の来店でございます。

ヒロシ:そうなんですね〜、いや〜、あの〜今日はドタキャンされちゃって、、BARってあんまり慣れてなくて緊張しちゃいますね〜

バーテンダー:そういうお客様は大勢いらっしゃいます。お客様だけではないのでご安心くださいませ。
ご挨拶遅れましたが私、当店のマスターの角 輝男と申します。宜しくお願い致します。

ヒロシ:かく てるお、、、まるでカクテルを作るために生まれてきた様なお名前ですね。

輝男:たまたまでございます。

ヒロシ:あっ!角だから髪型も角刈りなんですね!

輝男:たまたまでございます。

聞いてはいけない質問だった気がしてヒロシは気まずさを感じた。何か話題を変えようと思慮した時、今日新宿に向かう途中にスマホのニュースで見た、皆既月食が近い記事を思い出した。

ヒロシ:そういえば5月26日に日本全国で皆既月食が見れるらしいですよ。天文的な詳しいことはわからないけど月が赤くなるとか、、角さんも見るんですか、、、ていうかまだ何も注文してなかったですね!失礼しました。

輝男:とんでもございません。如何致しましょうか?

ヒロシは慌ててメニューを手に伸ばしペラペラとページをめくる。、、二往復した結果、サッパリ分からない。

ヒロシ:あんまりカクテルって詳しくなくて、、、じゃあ角さんのお任せでもいいですか?

輝男:かしこまりました。

角輝男はヒロシの注文に迷う仕草もなく、笑みを浮かべながらシェイカーに手を伸ばした、、

・未知との遭遇

馴れた手つきでシェイカーに何かを入れている。もし、原始人が新しい文明に遭遇したらこんな感じなのか?と言わんばかりにヒロシはじっとその動きを見つめていた。

三種類入れたのは分かった。けど何を入れたかはサッパリ分からない。軽くかき混ぜて味を見ると角輝男は納得した様子で軽く頷き、氷を数個いれ分裂していた本体を合体させ蓋をすると、シャカシャカと腕を前後にシェイカーを振り出した。

おお〜まさにBARって感じだぞ!!とヒロシが感激しているうちに腕の動きは次第に減速していきゆっくりと止まった
そしてカウンターに用意されたショートグラスに注がれる、その液体は紫色をしておりヒロシはそれを不思議そうに見つめている。

輝男:お待たせ致しました。ブルームーンでございます。

ヒロシ:ブルームーン!?

ミステリアスな紫色、ブルームーンとは一体!?

後編へ続く、、、

お一人様限定BAR HP

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